2014年9月8日 台風第18号より10年!
中島公園に大きな爪跡を残した台風第18号の来襲より10年たった。未来の災害に備える為に過去を知る。現在の視点で捉える台風第18号。
画像中心の簡単説明はこちら → 台風18号の大被害から10年
2004年9月8日に北海道を通過した台風第18号は中島公園にも最大級の被害をもたらした。このことを忘れることは出来ない。台風に強い公園をどう造るかのヒントが破壊された事実の中にある。倒壊から学ぶことは多い。
2004年9月8日の台風で倒壊した行啓通ポプラ並木
台風第18号は中島公園の景観を滅茶苦茶にして去って行った。2004年からの爪跡は消えてしまったように見える。しかし、行啓通のポプラ並木だけは倒壊したままよみがえる気配もない。百年かけて造られた景観が僅か数時間で通過する台風で失われた
幌平橋駅前行啓通のポプラ並木はほぼ全滅した。折れたポプラは根元から伐採されたが、10年たったら切り株も消え痕跡も残っていない。
画像は2001年11月3日撮影のポプラ並木。天を突くような堂々とした並木だった。もし半分の高さに剪定されていたら、それでも倒れただろうか? 若いときに観た映画「第三の男」のラストシーンがが印象的だった。あの並木道を後でビデオを借りて観てみると適当な高さに剪定されていた。
台風の翌日に撮った倒壊したポプラ並木。幌平橋駅交差点付近の惨憺たる様相。道路の左手に地下鉄駅一番口が見える。無惨に折れたポプラ並木は最終的に根元から伐採された。1本残った地下鉄1番口横のポプラも危険木として伐採されることになっている。
折れてはいるが適当な高さがあり根はしっかり張っている。高さを揃えて剪定して残す道はなかったのだろうか?
上の画像を中島公園側から見たところ。ここは地下鉄幌平橋駅駐輪場。その向こうが両側にポプラ並木があった行啓通。彼方に見えるのは藻岩山。
これが9月20日のポプラ並木。台風12日後には切り株だけが残っていた。
台風1週間後の地下鉄幌平橋駅前。台風一過か青い空が印象的。9月15日
緑豊かな幌平橋駅前広場は様変わり。台風18日後の風景。下の画像は台風前の春景色。2004年5月12日撮影。夏は鬱蒼とした緑に包まれていた。
菖蒲池と周辺風景
台風翌日の9月9日の写真を整理していたら、こんな写真があった。沢山の倒木の中で貸しボートは営業していたようだ。
確かにボートが浮かんでいる。手前は倒木に乗った鴨。遠くにカモメが2羽。
人々の日常が始まっている台風のあくる日。散歩する人も見られる。
倒木の中でのんびり憩う人たちも居るではないか。仕事中の一休み?
人形劇場こくま座、倒れた大木の枝の陰に彫刻「のびゆく子等」の像。
毎朝ラジオ体操している場所の木々が台風で倒れた。台風から1週間たち他に広い場所もあるのだが、長年使い続けた同じ場所にこだわる人々。
2004年の台風18号より約8ヶ月経過した。倒木は綺麗に片付けられたが、木々の緑が少なくて寂しい。倒木の他に枝折れも相当あったようだ。札幌コンサートホール・キタラをめぐる風景は、この1年間で大きく変わった。
台風で倒壊後、1年たったらポプラ並木はこんな風になってしまった。
台風被害から10年たったら何もなくなった。右上のポプラの木には幹に白いものが見える。これを拡大して下に掲載。 ↓伐採される日も近い。これで幌平橋駅近くのポプラ並木はキレイサッパリ無くなってしまう。
上の2枚の画像は2014年9月7日の撮影。あの台風18号の10年後である。
動物は活発に動く
台風で倒壊した木々、動きが活発になった動物
木々などの植物は倒れて死んでしまったが、動物の動きが活発になった。特に猫は野生を取り戻したように見える。池岸を歩いていると、なぜか鴨の群れが狂ったようにガーガー鳴きながら泳いでいた。対岸を見ると猫が鴨を捉えようとしているところだった。
猫は鴨を制圧すると口にくわえ日本庭園方面に走り去った。台風で荒れた中島公園でくりひろがれた猫対鴨のバトル。動物の世界を垣間見たような気がした。猫は台風から何かを感じ取り野生に戻ったのだろうか?
う~ん、ピンボケだ。撮った私は鴨をくわえた猫に見えるが皆様は?
至る所に木々など植物の残骸が転がっているが動物の死骸は見えなかった。災害に対して動物は強いと思った。動けるものの強みだと思う。
台風直後の8日
2004年9月8日 台風通過直後の中島公園
台風が通過した14時ごろから16時ごろまで中島公園を撮り歩いた。木々はバタバタと倒れたり、折れたたりしたが動物は元気だ。動けるものは強いとつくづく思った。以下、撮影日時順に表示。
台風一過、信号は青だが走る車もなく静かな行啓通。折れた木々が交通を妨げている。この先では地下鉄幌平橋駅付近のポプラ並木が倒壊していた。
写真を撮っているときは気が付かなかったが、イチョウが折れギンナンの実が散らばっている。ここは札幌コンサートホール・キタラに向かう小道。
行啓通に架かる南14条橋下流の鴨々川。ここは近所の人たちが毎朝ラジオ体操をしている広場。シラカンバが根こそぎ倒れている。まだ5分しか歩いていないのに次々とこのような惨状に遭遇する。
大木が根こそぎ倒れている。岸辺の土は柔いのだろうか。
鴨々川沿いに下流に向かって歩く。白鶴橋を過ぎて中州橋の手前。
鴨々川岸辺の木が折れている。ニセアカシアかな。根がしっかりと張っていても、こんな風に折れてしまう。今までにない強風である。
札幌コンサートホール・キタラ南側でも大木倒壊。エゾマツかな? まだ15分しか撮り歩いていないのに沢山の倒木に遭遇。中島公園中の木々が倒れているような予感がする。後になって予感が的中したことを知る。
折れた木が多いが、この程度の折れ具合なら今は回復し爪跡を残さない。
残っている木々が多いことは確かだが、どこに行っても倒壊した木々がある。台風直後は景観が一変したように見えたが、今になってみると、台風の爪跡を感じさせる場所は少ない。爪跡は緑で覆われ新しい景観をつくる。
豊平館前の池には折れた枝がいっぱい浮いていた。先ず危険防止、次に通行の確保、池の中の処理は後になってしまう。
キタラ裏の鴨々川は折れた柳に覆われて見えなくなっていた。この辺りは柳並木が続く風情ある散歩道だが、肝心の柳は昔に比べ3分の1くらいに減っている。根が浮いているということで危険木として伐採された柳も多い。今回は根が大丈夫でもこのように折れてしまった。
現在のカラフルな散歩道になった時点で柳は64本あったと推定する。現状は柳の古木14本、倒木の後に植えられた柳の若木7本、計21本。
これに対して、倒木した柳の後に植えられたイチョウは30本。そして倒木の後、何も植えられないで放置された空地が13ヵ所もある。(2012.11.15)
中島公園から渡辺淳一文学館に行くにはホタル橋を渡る。ホタルが棲息する川にしたかったのだろう。残ったのがホタル橋とフェンスに描かれたホタルの絵。ホンモノのホタルを観るための努力は水泡に帰したのか?
台風一過、カモたちの日常が始まる。餌を食べ満腹になれば休むかも。
川でも池でも岸辺にある大木が根こそぎ倒壊している。
只今15時16分だが日本庭園は臨時閉園。こんな状態では開園できなくて当然だが臨時閉園はこの12年で初めてと思う。
猛威を振るった台風だが去ってしまえば日常が始まる。いつも散歩している人は散歩する。惨状の中でのんびりと歩く姿に違和感を覚える。そう思いながら撮り歩いている私も、他人様にはどのように映るのだろう。
根こそぎ倒れている。やはりここも岸辺。池に囲まれた藤棚の周囲。
なんとなく中身が頼りない。倒れて見れば、それが当然に思える。
一方、こんな写真も。枝が下がっている以外、台風を感じさせない。
ここは藤棚のある園路。不思議なことに皆が普通に歩いている。実際には頭の中でいろいろ考えながら歩いていると思う。いつもと違う景色なのだから。
「臨時休業」の看板が出ていなくても休みと分かる売店。出入りできそうもないので営業は無理。しかし犬の散歩に休みはなさそうだ。
マンションからの見通しは好くなったが、プライバシーは保ち難い。台風一過で暮らしも多少変わるだろう。
人形劇場こぐま座前もこのとおり。片付くまでオープンできないだろう。
北(すすきの)側から公園に入り少し歩くと「のびゆく子等」の像がある。近くでこんな大きな木が倒れたことをご存知だろうか。木々は成長するので目に見える痕跡を残さない。そして新しい景観ができる。
中島児童会館前の遊具も使用不能状態。子ども達の興味を引く風景だが、怪我をしないためには折れた木には近づかない方がいい。これほどの被害があっても怪我人のニュースには接しなかったが……。
九条広場には中島公園のシンボル的彫刻「森の歌(山内壮夫)」がある。真ん中辺りで木の陰になっているが見えるだろうか。余計なことだが右側に猫がいる。台風被害の中で動物だけが元気だ。
もう1枚「森の歌」がハッキリ見える画像を掲載。
立派な大木と思っていたが、こうして見ると倒れるべきして倒れた感じ。
水天宮参道橋から撮った倒木風景。やはりここも鴨々川岸辺。
鳩たちも元気だが台風の時はどの様にしていたのかな。風で飛ばされた鳩は居なかったのだろう。死骸を一つも見ていない。
菖蒲池東側の人気休憩スポット。春はツツジ夏はキショウブに紫陽花、順々に花が咲く。しばらくすると秋の紅葉だが、台風で木が減っても、残った木々は例年と同じ様に紅葉していた。
美しい花と惨い倒木。思わず「美女と野獣」を連想してしまった。
倒れても立派な木。威厳を保って寝ている。
エサやるぞ台風一過の菖蒲池放って置けないカモ好きな人
2004年9月9日 台風当日行けなかった所を撮る
札幌護国神社の北西側に「彰徳苑」があり、戦没者慰霊碑や記念碑が立っている。そこでも多くの木々が倒れたが碑に被害はない。木は思ったよりも弱い。自然界のものだから死んだり生きたりするのが前提だからかな。
札幌では少ない伝統技術で作られた日本的建造物と思っている。残念ながら、その方面の知識がないので正確なことは分からない。公園のホームページを開設していると勉強しなければならないことが山ほどある。一応「中島公園パーフェクトガイド」と名乗っているが「完璧」の2文字が負担になってきた。
根が浮いていれば根こそぎ倒れるが根がしっかり張っていれば折れてしまう。北海道では想定外の風速だったのかも知れない。
札幌護国神社方面から地下鉄幌平橋駅に向かう園路。
テニスコートのフェンスは倒れ、木の根が浮いている。ここも被害甚大。
風による破壊がここまでとは今までの札幌では考えられなかったこと。もし想定されるなら風に強い木を選ばなければならない。現状のままなら剪定方法も考え直さなければならない。切りすぎれば美しくないが、切らなければ倒壊する。その限界を見極めるのは難しい。
山の中ならともかく、街中の木は倒れ易ければ危険だ。やはり風に強い木を選ぶ必要がある。背の低い木ばかりでも緑豊かな公園の方がいい。
こんな風景をあらゆる場所で見せ付けられると、都市公園では自然のままは難しいと思ってしまう。倒壊してしまったポプラ並木が、もし半分の高さだったら倒れただろうか? 高いポプラ並木は格好いいが倒壊して消失するリスクがあるのなら低い方がいいと思う。
幌平橋駅については緑に囲まれた出入口が気に入っていた。この駅は水と緑と野鳥の他は何もない駅。と誇りに思っていたが、今考えてみると何時倒れるか分からない危険木に囲まれた駅。一番口近くに残った一本のポプラも危険木として2013年中に伐採されることになっている。台風に耐えた1本も消える。
上の画像と反対側の1番口。このあたりの被害が一番大きい。
界隈で一番美しかったポプラ並木は強風で折れてしまった。
折れた木は根元から切られて片付けられた。幌平橋駅前の作業風景。
地下鉄幌平橋駅近くの豊水通。毎年8月下旬に開催される北海道マラソンが通過する道路。
この木はエゾマツかな? 山は藻岩山、建物は中島体育センター。昔この辺りにはプロレスの殿堂としても知られる中島スポーツセンターがあった。
台風通過次の日になると倒木もだいぶ片付けられている。
大きな木は格好いいが倒れたら始末が大変だなと思った。こんなことは実際に沢山の木々が倒れるまで考えたこともない。2002年の台風でも、かなりの柳が倒れたが、今回に比べれば僅かなもの。そこまでは考えなかった。
自由広場西側の園路。台風あくる日には日常が始まっているようだ。
上の一枚と同様だが、ここは南14条橋の下流にあたる鴨々川。
菖蒲池に行って見ると、ここでも沢山の大木が倒れた。
2002年の台風では、この辺りの柳が何本か倒れたが、そのとき生き残った柳が、今回の台風で倒れてしまった。柳はまだ残っている。
菖蒲池にも倒れた木々が浮いている。
おやおやこちらでも倒れている。現在この辺りに「菖蒲池」と書いた看板が立てられた。初夏にこの辺一帯でキショウブが咲く。
二日間台風現場を撮り歩いた感想
台風直後の8日と次の日、この二日間を撮り歩いて、動物と植物の違いを改めて考えさせられた。植物である木々は動けないのでその場で頑張っている。そして頑張りきれなければ倒れてしまう。
人を含めた動物は嵐が過ぎるまで安全な所に避難している。他の動物については見ていないのだが多分そうだろう。台風が去った後、のこのこ出てくる人間は、他の動物と行動がそっくりだ。
動物は、植物に対する優位性を楽しんでいるように見えた。嵐が去れば人は人の暮らしをし、鴨は鴨の暮らしをしている。そして植物だけが死んで横たわっている。ひたすら片付けられるのを待っている。もしここが山中ならその場で肥やしになるのだろう。
中島公園に残した台風の爪跡
2004年9月8日の台風18号通過の3日後、9月11日から現在までの爪跡をたどる。3日後より本格的な片付け作業が始まり爪跡は徐々に消えていったが未だに痕跡を残している。ただ一見して爪跡と分かる場所はない。
2004年9月11日 三日前に台風とは信じられない風景
台風三日後、被害のあった場所を避け遠景を撮る。台風はどこ吹く風?
後片付けは進んだが大木の整理は残っている。菖蒲池東岸遊歩道。
2004年9月15日 すっかり見通しが好くなった幌平橋駅前
台風通過後の9月15日、地下鉄幌平橋駅1番口。ポプラ並木が倒壊して藻岩山が見えるようになった。台風後1週間たったが後片付けは道半ば。
2004年9月20日 折れた木は切り株だけになった
緑豊かな地下鉄幌平橋駅前もすっかり明るくなった。倒木最多エリア。
2004年9月23日 倒木の陰でピクニック
近くに寄るのも失礼なので遠くから撮ったが家族でピクニックの様だった。
2004年9月26日 児童会館・水天宮近くでも倒木多数
左側は鴨々川、川向こうは水天宮。右手に中島児童会館がある。
2004年10月8日 台風1ヶ月後
それなりに整理されたが、ポプラ並木が切り株だけとは寂しい。
2004年10月12日 菖蒲池南岸、枝を折られた木も多い
根こそぎ倒れた木は穴が土で埋められ、折れた木は切り株が残る。
2004年10月23日 札幌コンサートホール・キタラ
菖蒲池東岸より池越しに見える木々に隠れたキタラは美しかった。
2005年4月19日 台風の爪跡は年を越す
片付けられないまま年を越した台風被害木。護国神社彰徳苑。
2005年4月27日 台風18号から7ヶ月余りたった
台風による倒木で木々は減ったが、クロッカスの花は例年通り咲く。
2005年5月12日 倒木で藻岩山がよく観えるようになった
倒れた庭球場フェンスは補強され、木々が減って藻岩山が見え易くなる。
2014年9月7日 10年前の台風18号まではポプラ並木だった
ポプラ並木は無くなったが10年たてば、これが当たり前の風景となる。
人は人鴨は鴨にてよきそうろう台風一過の中島公園