藻岩山への眺望を活かし「池泉回遊式」の庭として設計

中島公園は「お宝」がいっぱい。そう思って園内を掘り起こすことばかり考えていたら大切なことを忘れていた。それは藻岩山の景観。これなくしては中島公園を語れない。


中島公園菖蒲池と藻岩山。 札幌パークホテル11階からの眺望。

「中島公園は、1907(明治40)年に長岡安平が中島公園設計方針を提出。長岡は,清流と藻岩山とその奥に連なる山々の眺めが素晴らしい景勝地が市街地の近くにあることを重要とみなし、中島公園を池の水景や藻岩山への眺望を活かし,自然の風致を織り込んだ『池泉回遊式』の庭として設計した」(「ランドスケープシンポジウム2011報告書)

中島公園に初めて来たとき、公園というよりも庭園のような印象があった。「池泉回遊式」の庭として設計されたと聞いて、なるほどと思い納得した。


1918年開道50年記念博覧会当時の中島公園。 札幌市公文書館所蔵

「回遊式の庭ってなんだ?」
「池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)と言うのです」
「意味を聞いているんだよ」
「室町時代における禅宗寺院や江戸時代においては大名により多く造営された形式で……」
「簡単に言うと?」
「大きな池を中心にして周りに園路を巡らし、池の中には中島を設け橋、名石などで各地の景勝などを再現するのです」
「築山もあったよな」


中島公園日本庭園。木々の陰に国指定重要文化財「八窓庵」。

中島公園は菖蒲池の水景や藻岩山への眺望を活かして造られた。自然の風致を織り込み「池泉回遊式庭園」として設計れたと言われている。当時の造園技術の第一人者、日本人初の公園デザイナー長岡安平の設計により造園されたものである。

「菖蒲池と鴨々川があり藻岩山の景観があっての中島公園なのです」
「そうかい」
「藻岩山が見えなければ中島公園とは言えません」
「そんなこと誰が決めた」
「藻岩山への眺望を活かして造られたのですから、設計者の意思です」

山が一番美しく見えるのは仰角8度。藻岩山に対する中島公園は、まさにこの位置にある。菖蒲池北側から池越しに見る藻岩山は絶景である。

残念なことに、十数年前から藻岩山の眺望を隠すように高層ビルが建ち始めている。今のところ、かろうじて山の形が見える。

「この11年間、高層ビルの建設はありません。中島公園を愛する気持ちが新規建設を抑えているのでしょうか」
「景気が悪いからじゃないか」

何の対策もしなければ、遅かれ早かれ中島公園から藻岩山が見えなくなる時代が来るだろう。池と川の現状を守ることはたやすいが、藻岩山の景観を守ることは難しい。高さ制限などの規制を伴うからだ。


ビルに隠れた藻岩山。 立ち位置によって隠れ方は異なる。

もし藻岩山の眺望を失えば、造園設計の理念が崩れてしまう。その場合、中島公園の性格もかわるだろう。気が付いたら藻岩山が見えなくなっていた、と言うことでは困る。当局はどう考えているのだろうか?

30分で140年をさかのぼる小さくて遠い旅

札幌は、190万都市でありながら自然環境にも恵まれ解放的なイメージがある。モダンな札幌駅前・大通地区から、レトロな狸小路・薄野、そして藻岩山の観える中島公園までの直線道路は「駅前通」と呼ばれている。


発展著しいJR札幌駅ビル周辺。

すすきのは歓楽街として知られているが、もう一つの顔は寺町である。薄野の南には川端の柳が(いにしえ)の雰囲気を残す鴨々川が流れている。 この辺りがお寺の多い落ち着いた感じの街であることは、余り知られていない。 

小説『すすきの六条寺町通り』の舞台にもなっている「寺町すすきの」は、モダンな札幌駅前とは対照的なレトロな街である。

界隈には新善光寺中央寺、新栄寺、玉宝禅寺、永昭寺、少し離れて東本願寺がある。そして、中島公園に隣接して、水天宮、弥彦神社、札幌護国神社、多賀神社などが建っている。

モダンな駅前に対してレトロなすすきの・中島公園地区は、札幌のもう一つの顔としたい。190万都市の顔は一つではいけない。


南7条3丁目の成田山札幌別院新栄寺。

札幌駅前から真っ直ぐ歩るこう! 新しい街より古い街に向けて歩いてみよう。それは30分の小さな旅だが、札幌の歴史を遡る(さかのぼる)遠い道のりでもある。雨が降れば地下通路や地下街に、疲れたら地下鉄にも乗れる。体調に合わせて歩けるし、直線なので迷うこともない。


厳しい冬にはもってこいの地下歩行空間。 北国では特に便利。

札幌駅から真っ直ぐ歩く駅前通り散歩。横道にそれて歩いても簡単に戻れる、とても手軽な散歩道である。これを札幌市内観光の目玉にしてほしい。キャッチコピーは「30分で140年を遡る小さくて遠い旅」。もちろん駅前散歩の終点は藻岩山であり中島公園である。


4月から大改修、築132年の豊平館。工事完了は4年後の2016年3月。

中島公園の東側には札幌の母なる川と呼ばれる豊平川が流れている。そこに架かる幌平橋に「ポートランド広場」と名付けられた憩いの場がある。水面からの高さが20mにもなる展望アー チに上ると滔々と流れる豊平川越しに藻岩山が見える。

これはかなりの絶景である。振り返れば市街地が遠望できる。中島公園と鴨々川、藻岩山と豊平川、そして市街地。それらを一望できる場所は、この展望アーチ以外にない。観光資源として活用すべきと思う。

2012年6月22日更新
中島公園資産活用「かんたん解説」

公園の資産と活用を考えるリンク

中島公園の資産と活用シンポ報告書
資産活用「簡単解説」3.岡田花園
資産活用「簡単開設」2.中島競馬場
資産活用「簡単解説」1.藻岩山眺望

中島公園・昔と今サプページ

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野外彫刻関連情報

中島公園彫刻クイズラリー
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シンポジウム2010「北の彫刻

「中島パフェ」関連リンク

札幌市公園緑化協会中島公園
札幌彫刻美術館友の会
札幌市公文書館
エッセー「楽しい食卓朝の食卓」

菖蒲池と鴨々川 札幌市公文書館所蔵

中島公園は藻岩山、鴨々川、菖蒲池など自然の風致を織り込んだ「池泉回遊式庭園」。一方、博覧会、スポーツ大会、レジャーなどで賑わいを見せる公園でもあった。

菖蒲池


水景としても重要な役目がある菖蒲池。当初は貯木場として整備された。


1918年開道50年記念博覧会の絵はがき。名誉橋を渡り池中の迎賓館に着く。


開道50年記念博覧会当時の菖蒲池。


夏はボートが浮かぶ菖蒲池は、冬になると凍結する。 そしてスケートリンクになる。そこでは、スピード、フィギュア、アイスホッケー(上の画像)などが行われた。

冬の最大のイベントは「氷上カーニバル」。 仮想したスケーターがワルツのリズムに合わせて氷上を優雅に楽しく滑る。

カーニバルにかける市民の情熱は、船山馨の『北国物語』に書かれている。黒澤明監督の映画『白痴』、氷上カーニバル・シーンも幻想的で素晴らしい。中島公園が輝いていた時代。こんなときが再び訪れることがあるのだろうか。

鴨々川

藻岩山、鴨々川、菖蒲池、この3点がそろって、初めて中島公園と言える。一つ欠けても設計者が考えた中島公園ではない。

この中で一番古いのが藻岩山。そして、2番目は鴨々川と思う。この二つは自然が造ったもの。貯木場として造られた菖蒲池とは一線を画す必要がある。


1975年鴨々川水遊び場が整備された。


さっぽろ青年開発会議等の要望で整備。


のびのび遊ぶ子供たちで賑っていた。


水遊び場の水深は20cm程度。この子たちも今ではアラフォー世代。残念ながら、今はこれほどの賑わいはない。川渡りロープも外されてしまった。

しかし、夏になれば多くの子供たちが遊ぶ姿が見られる。自然の川を利用した水遊び場は楽しい。今でも人気がある。 

町内会による鴨々川清掃奉仕


中州橋付近で町内会による鴨々川清掃奉仕が行われている。
「クリーン鴨々川清掃運動」も加わり、清掃活動も幅が広がってきた。 

最近の鴨々川は奇麗になっているが、相変わらず空き缶や行楽ゴミが流されている。ほとんどの人はマナーを守りながら公園を利用しているが、全員に徹底するのは難しい。

余白つぶしです。

「公園を汚す人、清掃奉仕する人、世の中いろいろですね」
「汚す人と清掃する人を一緒にするな」
「そうですね」
「書くだけでなくボランティアやりな」
「鴨々川清掃運動に参加してますよ」
「写真撮ってるだけじゃないか」
「そう言えば、そうですね」
「どうせ撮るなら汚すヤツを撮れ」
「う~ん」
「撮ったらここで発表しろ」
「う~ん、なんと申しましょうか……」
「するのか、ハッキリしろ!」
やりません

以上の画像は札幌市公文書館所蔵

こちらをクリック!→札幌市公文書館

 
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